青森ねぶた祭

ねぶたに圧倒される夜祭り

青森ねぶた祭りは毎年8月に行われる、青森市の伝統的なお祭りです。全国的にも有名なお祭りなので、街はねぶた祭一色に染まります。ハネト衣装を着た参加者とねぶたを楽しみにしてきた人でにぎわい、そのざわざわした雰囲気もまた楽しみのひとつです。

ねぶたが通る道の両サイドはひとでびっしり。まだかまだかと待っていると、「ラッセーラ、ラッセーラ」と威勢のいい掛け声とともに、笛や太鼓、そして手振り鉦が音頭をとりながらこちらに近づいてきます。そのお囃子は初めて聞いたにも関わらず、なぜかずっと昔に聞いたような、懐かしい気持ちにさせてくれます。

今から何が起こるのかとドキドキさせるお囃子が通り過ぎると、やってきました。真っ暗な夜空に行燈のような柔らかいオレンジ色明かりのねぶた。眩しい明かりではないのに、その灯りでさらにねぶたの深みが増します。私の何倍もの大きさのねぶたを見上げると、すごい形相をして、力強い姿。それを見た時は鳥肌が立ちました。まるで生きているような、魂が入った目をしており、台の上から降りてくるのではないかと思うほどです。もちろん、かわいい作品や神様などいろいろあるのですが、私は力強い作品に心奪われます。

ねぶたはまさに動く美術品

かなり重みがあるにも関わらず、台を回しながら見せてくれるので、ねぶたがこちらに迫ってくる感じがしてとても迫力があります。また全体を見ることができるので立体的な美しい曲線や、さまざまな色づかい、そして細部にまでこだわった作品を見ることができ、まさに動く美術品です。

ねぶたのいわれは、もともと青森にある精霊流しと、奈良時代に中国から伝わった七夕祭りが合わさり、今のような形になったと言われています。

ねぶたは毎年、歴史の題材をもとにした絵が描かれます。下絵とはいっても指先や、着物の絵柄まで細部に至るまで描かれ、色付けまでされ、その絵だけでも芸術作品です。

その下絵を基に部分ごとに作り上げていきます。まずは手足や顔など。その後、骨組みを作っていきます。骨組みは、木材や針金を使用します。針金を使うことで体の丸みを作成できるため、より本格的に感じられるようになります。

その後、出来あがった骨組みの内側に照明器具を取り付けていきます。このおかげで、真っ暗な夜空に力強い人形が浮かびあがるのです。

次は、骨格に紙を貼っていきます。針金にボンドを塗り、そこにピンとしっかり張った紙が貼られていきます。それが完全に乾くと、墨で顔や着物などを描いていきます。

ろう書きといってパラフィンを溶かし、それで模様を描くことにより、光でその柄が浮かび上がるような手法をつかっているそうです。このような細かい、もしかしたら気付いてもらえないかもしれないところまで手を加えているのは、さすが作家さんだなと感心します。

黒い墨で顔などを描き上げたら、次は着物や帯の色や柄などを色付けしていきます。着物や帯の柄もここで描き加えられていきます。これで、最初にかいた下絵に近づいていくのですね。

無事にねぶたの本体が出来上がったあとは、車輪がついた台の上に50人がかりで乗せます。本体が3メートルほどあるので、台の上にのせるとなんと5メートルにもなるそうです。それで見上げるほどの高さになるのですね。

ねぶたは、もともとは町内の手先が器用な方が作られていたそうです。仕事もそっちのけで、ねぶたを作っていた人も多かったそうです。

それがだんだん技術を求められるようになり、「ねぶた師」といわれる方が作るようになったそうです。その中でも、高度な技術をもち、長年ねぶた制作に貢献してきた方は「ねぶた名人」に選ばれます。

1958年から2012 年までの間に「ねぶた名人」と呼ばれる方はわずか6名しかいないのです。どれだけ、技術を必要とし、長い年月ねぶたの制作に携わっていくことが大変なことかがわかりますね。

ねぶた祭りはなぜ始まったのか?

近頃は、海外の行事も日本に伝わり、広まってきています。そんな時、ふと考えることがあります。この行事お祭りはもともとなぜ始まったのだろうかと。

若いころはイベントやお祭りをついつい楽しむだけで終えていました。しかし、そこには昔から伝わる意味があるということを時には思い出し、子供たちに伝えていくことも、今を生きている私たちにとって大切なことなのかもしれません。

このねぶたも、起源は精霊流しからきています。亡くなった方の精霊がお盆に家族のもとに帰ってきて、お盆を共に過ごし、お盆が終わるときに精霊流しにより、再びあの世へ帰っていただく、これが精霊流しですね。きっと、ご先祖様も荘厳なねぶたの姿、それに関わった多くの人の努力、そしてみんなの笑顔をご覧になってあの世に戻られるのでしょうね。

お囃子聞きながらねぶたを見ていると、自分がタイムスリップしたかのような感覚にとらわれます。次回は見る側ではなく、ハネト衣装をまとい参加するために、青森を訪れたいと思います。