最終更新日 2021/06/18
初めて阿蘇山を見たのは久住山に登山した時でした。牧ノ戸峠でバスから降り、そこから山登りがスタートです。ここはやまなみハイウェイで一番高いところにある峠です。登り道は整備されています。その日は天気がとてもよく、遠くまできれいに見渡せました。
牧ノ戸峠の展望台で、山登りが趣味だというご夫婦に出会いました。その方に、「見てごらんなさい、向こうにある山」といわれ、私はご夫婦が指さす方向をみました。大きく、そして横に広がる山でした。
「あれは阿蘇山ていうんだけど何かにみえない?」と聞かれました。「涅槃像っていってお釈迦さまが横たわっている姿なのよ。ほら、こっちが頭で、あっちが足。」
そういわれてわたしの中に何かが走ったような感覚を受けました。わたしには本当にお釈迦さまが優しい表情で横になっているようにみえました。阿蘇山を見ると、いつもこの時を思い出します。
世界最大級のカルデラをもつ活火山
阿蘇山は、日本の九州の中央、熊本県の阿蘇地方(阿蘇市、高森町、南阿蘇村)に位置し、17の中央火口丘と大規模な外輪山、そして世界最大級のカルデラをもつ活火山です。カルデラとは、火山が噴火したことによってできた大きなくぼ地のことをいいます。そのカルデラは、なんと南北25キロメートル、東西に18キロ、面積が約380平方キロメートルもあります。
カルデラは、9万年前までに発生した大規模な4回の噴火で、大量の火山灰などを噴出して出来ました。4回目の噴火が特に規模が大きく、発生した火砕流は九州全土を覆うほどで、火山灰は北海道まで到達したほどです。どれだけ大きなカルデラかが想像できることでしょう。
カルデラを形成したことによりできた外輪山は、カルデラの縁にあたります。阿蘇山の外輪山を望む展望名所はいくつかありますが、その中でも大観峰からの眺めはまさに絶景です。阿蘇山に行かれた際は是非訪れたい場所です。
5つの山からなる阿蘇五岳
阿蘇山は阿蘇五岳ともよばれ、その名の通り5つの山からなります。涅槃像でお話しすると、根子岳が頭の部分になります。それから、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳の順に並んでいます。
私がおすすめしたいのは中岳です。こちらの標高は1,506メートルです。
中岳は、現在でも活発な火山活動を繰り返す活火山です。2016年4月に発生した熊本地震の直後、そしてその半年後に発生した噴火は記憶に新しいです。
中岳にある火口を初めてみたときは声を失いました。ごつごつとした山肌に囲まれたくぼみに、とてもきれいなエメラルドグリーンの湯だまりがあり、本当に美しい色でした。
中岳へは、有料の阿蘇山公園道路を通って車でアクセスできます。以前、阿蘇山ロープウェイがありましたが現在休止中で、代替のシャトルバスを利用するこができます。
火口周辺では、火山ガス(二酸化硫黄・SO2)が流れています。活動が活発化したり、有毒ガスが発生した場合は立ち入りが規制されます。また、ぜん息、気管支疾患、心臓疾患がある方、心臓ペースメーカー装着の方、体調不良な方は火口見学が禁止されていますのでご注意ください。中岳火口の規制情報は阿蘇火山火口規制情報をご覧ください。
火口跡に出来た大草原 草千里ヶ浜
中岳の火口に行く途中には草千里ヶ浜と砂千里ケ浜があります。草千里ヶ浜はかつての火口の跡にできた大草原で、中央には大きな池があり、放牧された馬が草をはむ、のんびりとした風景が広がります。レストランや土産物屋さんがあり、駐車場も十分なスペースがあります。敷地内には阿蘇火山博物館があり、阿蘇火山の成り立ちや地形がわかる展示や中岳火口のライブカメラ映像を見ることができます。
砂千里ヶ浜は草千里ヶ浜とは違って、火山灰や火山礫など荒涼とした荒野が広がります。黒澤明の映画のロケ地にもなりました。
烏帽子岳は、比較的他の山よりも傾斜が緩やかなので、阿蘇五岳の中で最初に登山に挑戦するにはこちらの山がおすすめです。高さは1,337メートルあります。
高岳は一番標高が高く1,592メートルあります。
根子岳は、標高は1,408メートルで、この阿蘇五岳の中で一番最初に形成されたそうです。こちらは山頂部分がギザギザとがっていて、なだらかな表面しかイメージしていなかったので、すこし不思議な感じがしました。ここには天狗岩といって天狗のような長く突き出た岩があります。
阿蘇山周辺には、一級河川白川の水源で美しい水が湧き続ける白川水源、2000年以上の歴史があると言われる阿蘇神社(現在熊本地震による倒壊から復旧工事中)、阿蘇温泉、内牧温泉などの温泉、美味しいグルメのお店など見所がたくさんあります。
なお、阿蘇山系の各登山路は、2016年4月の熊本地震などの影響による崩落、亀裂によりルートが寸断され登山不可のルートや足場が悪くなっている場所もあります。阿蘇山登山情報や気象情報、噴火関連情報などを確認し、十分な注意をしてください。