Last Updated on 06/18/2021 by Lovesome Journey

伝統工芸品と伝統的工芸品

日本には技術や技法が長く受け継がれて作られる工芸品がたくさんあります。それらは伝統工芸品と呼ばれ、陶磁器、漆器、織物、人形、木工品、文具、その他、多種多様で、その数は1,300種類とも言われるほどです。

その伝統工芸品の中でも、国が産業振興を目的に定めた法律「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づいて指定された「伝統的工芸品」があります。伝統的工芸品の検査に合格した製品には、伝統マークがついた証紙が貼られます。

「伝統的工芸品」と呼ばれるには5つの要件が必要となります。

1つめは、主として日常生活で使われるものです。2つめは、製造過程の主要部分が手工業的であることです。3つめは、伝統的技術または技法によって製造されているもの。4つめは、伝統的に使用されてきた原材料を主として使用していること。そして5つめは、一定の地域で産地を形成し、少なくない数の人が従事していることです。

伝統的工芸品は、日本全国で235品目あります。そのうち、九州地方の7県には、21品目の伝統的工芸品があります(2019年11月現在)。焼き物や織物、装飾品から仏具に至るまでさまざまです。九州各県の代表する伝統的工芸品をご紹介します。

福岡

福岡県といえば博多人形です。博多人形の特徴は、毛髪の一本一本、着物、帯や小物も全て土でつくられ、色付けされていることです。着物のひだまで細かく作られています。

福岡の玄関口である博多駅に、博多人形師の中村信喬さんが作られた「エンジェルポスト」があります。古来より博多は交易の中心地で、多くの情報文書が行き交いました。その地に中村信喬さんが「思いが届くポスト」として作成されました。

ポストの上にいるエンジェルがあなたの思いが届く用に見守ってくれているので、そこから大切な方にお手紙を出してみるのも旅の思い出になりそうですね。

他に博多織、久留米絣、小石原焼、上野焼、八女福島仏壇、八女提灯があります。

佐賀

佐賀県の伝統的工芸品といえば、伊万里焼/有田焼です。毎年5月のゴールデンウィークに「有田陶器市」が開催されます。普段は手が届かない陶器もお手頃な価格で手に入るということもあり、全国から陶器ファンが集まります。作家さんとお話しできたり、おまけをもらえたりと人との交流も楽しめます。

他に唐津焼があります。

長崎

長崎県の伝統的工芸品で私がいま目を離せないものは波佐見焼です。波佐見町にいくと、あちこちに食器以外の波佐見焼に出会えます。ひとつだけご紹介すると、町の案内図です。みなさんで散策しながら発見していくのも楽しいかと思います。

私の波佐見焼の印象は、時代とともに一緒に進化しているという感じです。波佐見焼が生まれたのはいまから400年前のことです。磁器のお椀は高級なもので庶民には手の届かないものです、ところが、波佐見焼の「くらわんか碗」、簡単な模様を描いたもの厚手で壊れにくものだった為、庶民に人気でした。手の届きやすい波佐見焼は、日本の食文化の発展に大きく影響したようです。

他に三川内焼、長崎べっ甲があります。

熊本

続いて、熊本県の伝統的工芸品でご紹介したいもの、それは山鹿灯籠です。毎年8月に山鹿灯籠祭りが開催されます。浴衣を着た女性がこの山鹿灯籠を掲げ優雅に踊ります。

山鹿灯篭は黄金に輝いています。しかし、木も金属も一切使わず、手すきの和紙と糊だけで作り上げられているのです。本当に驚きです。初めて見た時は、金属で作っていると思いました。カーブしている部分や細かな柄などを見ても、未だに和紙だけで作られているとは思えない、まさに美術作品です。

他に小代焼、天草陶磁器、肥後象がんがあります。

大分

大分県の伝統的工芸品は別府竹細工です。別府に行くと必ずお店に足を運びます。日本の竹栽培の6割を占めており、竹細工の歴史も長いもので、日本の第12代天皇が別府に立ち寄った際に、茶碗籠をつくったのが始まりと言われています。14世紀には、商人が商売の品を入れるための竹籠が作られ、そこから別府の竹細工市場が確立していきます。

すぐに作品を作れるわけではなく、まず竹ひごを作らなければいけません。3~4年ほど経った竹を伐採します。その後、煮沸して油抜きをします。その後、天日で乾燥させると、象牙色に変化します。

竹を必要な長さに切って半分に割ります。さらに半分、そしてさらに半分に割るという工程を繰り返します。きれいにまっすぐ割れるようになるには3年以上かかるそうです。

細く割ったを面取りし、やっと1本の細い竹ひごが出来上がります。竹細工を作るにはこの竹ひごがたくさんいるのですから、本当に長い道のりを経て、あの美しい竹細工が出来上がるのですね。

宮崎

宮崎県の伝統的工芸品で気になるものは都城大弓です。あまり弓などはなじみがないかもしれませんが、私の祖母が若かった頃、弓道をしていました。全国の竹弓の90パーセントを生産しているので、きっと祖母も使っていたのだと思います。

製作過程はなんと200から300を超えるそうです。弓の曲線を作るだけでも、100本もの竹のくさびを打ち込んでいくという、とても時間のかかる工程です。一本の大弓を作るのに1人の職人さんだけで仕上げます。それぞれの工程を自分のものにするのになんと10年もかかるということで、いかに大変な作業かということがうかがえます。

他に本場大島紬(鹿児島県と共通)があります。

鹿児島

そして、最後にご紹介するのは鹿児島の伝統的工芸品、川辺仏壇です。仏壇が工芸品ということに驚く方もいるかもしれません。1200年頃に仏教が盛んだったころ仏壇も多く作られていました。明治2年の廃仏毀釈により鹿児島の仏像も仏壇も焼失しました。そのような中、「ガマ」(洞窟)の中で信仰を行い。見かけはタンスだが、開くと金色に輝く仏壇という、隠し仏壇が、現在の川辺仏壇の「ガマ」という形で残っている。

印象に残るのは漆黒の塗装に細かな彫刻、そして洞窟の中で煌びやかであったことを想像させる金箔の美しさです。悲しい歴史のなか、人々の心を支えて乗り越えた仏壇、工芸品にふさわしいものですね。

他に本場大島紬(宮崎県と共通)、薩摩焼があります。

九州には伝統的工芸品だけでなく、魅力的な伝統工芸品がたくさんあります。観光スポットに行くのも旅の楽しみですが、ちょっと趣を変えて、伝統工芸品を見に行くのも新しい旅の仕方かもしれません。きっと今までとはまた違う発見ができることと思います。