鞆の浦と仙酔島

最終更新日 2021/06/18

2012年、霊感のある友人の提案で仙酔島を訪れた時の話です。私を含め4人の女子旅でした。仙酔島は日本で最初の国立公園となった「瀬戸内海国立公園」の中にあります。

ノスタルジックな古い町並みが残る鞆の浦

鞆の浦

鞆の浦の渡船場に着いたのは、午後3時近くでした。鞆の浦は2時間もあれば、ゆっくりと街歩きができます。鄙びた港町ですが、多くの歴史的建造物があります。地元の人が「とうろどう」と呼ぶ常夜灯は鞆の浦のシンボルです。1859年に建てられ、灯台として船の出入りを誘導してきました。他にも福禅寺の対潮楼や医王寺など見どころがたくさんあります。鞆の浦の高所から眺める瀬戸内の景色は絵のような美しさです。仙酔島はここ鞆の浦から船で5分の所にあります。

人生が変わる宿「ここから」

その夜泊まった宿の名は「ここから」。ここから人生が変わる宿と記されていました。人生の半ばも過ぎた私は今更人生が変わることを求めてはいませんでした。しかし、今思えばあの時から、私の人生は変わり始めたように思います。

部屋にテレビもない、布団は自分たちで敷くという、ちょっと変わった宿でした。まず、「おかえりなさい」と出迎えを受けた宿は、後にも先にもここだけです。宿を去るときは、火打ち石を鳴らして、「いってらっしゃい」と見送られました。「ここから」さらに旅に出る気分になりました。宿には人生を考えるにふさわしい本がたくさん並んでいました。

夕食の前に入った風呂がとてもユニークで忘れられません。作務衣のような服を着て、風呂に行きます。母の胎内風呂、ぽかぽかと温かいお湯に浮かんでいい気持ちでした。次にヨモギ風呂で浄化、その後もいくつかの風呂に入って、最後は世界一大きな露天風呂へ誘われます。これが、なんと砂浜を通って、瀬戸内海の海のことでした。11月の海水は冷たいはずなのに、とても心地よく不思議な気分でした。世界一大きな露天風呂の中で自然と一体化しました。

夕食には新鮮な土地の食材を使ったご馳走を味わいました。食後私たち4人のために、大太鼓が打ち鳴らされ、神楽の様な舞が上演されました。遠い先祖の記憶を追うような不思議な感覚を味わいました。ここは様々な不思議が起こる島でした。

翌朝、この島にある五色岩を見に出かけた時にも、不思議な体験をする事となったのです。世界に55か所、日本ではここだけにあるという五色岩。本当に五色の断層が見られます。不思議はこの岩の色ではないのです。祠みたいな所に立っていたら、自然に体が揺れ始めたのです。糸にぶら下がった錘がぐるぐると円を描くように。「これは何?」驚いた私に霊感のある友人は、円が回る方向を確認して、ここはいい気が流れている磁場だといいました。私にはよくわからないけれど、最近はやりのパワースポットなのでしょうか。

人生が好転した仙酔島

「ここから」私の人生が変わったことについて、話をします。あの日、この宿で外国からの一人旅の男性に出会いました。彼は、オランダからこの島を訪れていました。鞆の浦のホテルでは、英語が通じたが、ここでは英語が通じないので困っているというのです。風呂に入りたいが、どうすればよいかわからないとのことでした。英語が上手くしゃべれなかった私は、片言の英語で何とか説明をしました。この時、英語がもっと話せるようになりたいと思いました。

「自分に与えられた道がある」と書かれていた仙酔島の宿でもらったパンフレット。旅が好き。外国への憧れ。日本語教師として外国人と接していた私に他にどんな道があるのだろう、わからないままに英会話の勉強を始めました。それから4年、ツアーガイドの資格をとり、外国からのお客様を案内するに至っています。

旅の目的は人によって様々でしょう。名所旧跡を求める旅。学びのための旅。絶景を眺めに行く旅。癒しを求める旅。様々な旅の形があるけれど、旅先での思いがけない出会いは、長く心に残る思い出となります。人との出会い、思いがけない出来事との出会い、美しい自然との出会い、その全てがかけがえのない財産となるのです。そんな旅がこの島で体験できます。ぜひこの島への旅を計画してほしいと思います。もしかしたら、「ここから」あなたの人生が変わるかもしれません。

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