糸島 目隠し女相撲

最終更新日 2021/06/18

全国でも珍しい女相撲

全国で恐らくここだけで受け継がれ開催されていると思われる奇祭が、目隠しをしてしかも女性だけが参加できる相撲のお祭りです。通常の相撲では土俵には女人禁制で未だに女性は上がれない現状がある中、逆に男性が力士として土俵に入れないという極めて珍しい祭りと言えるでしょう。

糸島市二丈松末の松末五郎稲荷神社で毎年12月8日に近い日曜日に開催されるふいご大祭の奉納催しの一つが目隠し女相撲です。歴史はそれ程古くはなく戦後間もない頃、世の中は乱れ一寸先は闇のような時代に、人間の世渡りの難しさを表現しようと目隠しをして相撲をとる難しさに例えて始まったのが起源です。

実は元々男も参加していたそうです。ところが男は祭りとなるとすぐ酒を飲んで騒ぐは喧嘩はするわで手が付けらず祭りが成立しない状況になったため男の参加が禁止となり、今では力士は信仰厚き女性のみです。勝負審判や呼び出しも女性ですが、行司だけは男性です。

午前11時からまず神事が始まり、正午を過ぎるといよいよ目隠し女相撲の準備に取り掛かりまもなく取り組みとなります。神社の本殿前にスペースがあり、そこにエンジ色の4m四方の土俵(マット)が設置されます。

この相撲は本格的で、相撲甚句(男性担当)があり、化粧まわしをつけての土俵入り、太刀持ちや露払いを従えての横綱土俵入りもあります。女性力士が東西およそ12人ずつに分かれ、横綱、大関、関脇、小結、前頭筆頭から8枚目まで番付表も作られますが、原則として古くからこの神社、地域、催しに関わっている人が番付上位になります。

座ったままで相手を倒すと勝ち

いよいよ取り組みですが、力士は下は白のトレーニングパンツを履き上は菊の御紋入りのはっぴという白装束を身に着け、まわしの代わりに紅白の帯を腰に巻きます。ちなみに行司の衣装も本物で大変高価だそうです。

まず東西から土俵に上がり正座をします。互いにあいさつをした後、後ろを向き七福神の顔が描かれた頭巾をすっぽりと頭からかぶります。これで目隠し状態となり準備完了です。

そのまま行司の「はっけよい」の掛け声で向き直り、座ったままの状態で手探りで相手を探して倒した方が勝ちとなります。どこに相手がいるのかわからないので土俵の外の観客から様々な声が飛び交います。「前、前、右、左、あと何cm!」などです。どちらの力士への掛け声かわからなくなったりもするので見ていて時に滑稽で大変楽しい光景になります。

初めて相手に触れるとドキッとして手を引っ込めたりしながらも最終的には相手を組み止め、手や肘など上半身の一部が土俵に着いたら勝負ありです。勝てば景品ももらえ、勝っても負けても和気あいあい爆笑の連続で、健康的で明るい女性だけの奉納目隠し相撲です。時に物言いがつき、勝負審判たちが真剣に協議する様も見ものです。

当日飛び入り参加もOKです

出場者は母から娘、さらに孫娘など代々参加している人や、前の年は妊娠していて出られず翌年に復帰してきた女性など、20代半ばから最高齢はなんと80代半ばという元気なおばあちゃんです。

また、当日飛び入り参加もOKで、ある年は近くの大学の欧米人アジア人留学生が、さらに地元放送局の女性アナウンサーやキャスターもほぼ毎年出場するそうです。

しこ名もおもしろく、例えば福岡ブランドいちごから名を取った「あまおう山」、経営している焼き鳥屋の名前をそのまま付けたもの、専業農家の「百笑屋」などユニークで笑えます。

かつては前頭13枚目まで参加者がいたそうで、課題はやはり後継者、参加女性の減少防止だそうです。ぜひ私もと思った女性は当日福岡県糸島市の松末五郎神社へお越し下さい。また、見物客も毎年およそ100人が訪れるそうです。神社下の駐車場は広くはないので乗り合わせて来る事をお勧めします。

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