最終更新日 2021/06/18
綾町の8割が森林という森の町
県庁所在地宮崎市から車で35分、バスで1時時間弱、九州山地の南東麓に位置するのが綾町です。大淀川の支流本庄川や綾北川を上流に向かいますが、両側に広がる田畑など田舎の景色には四季を通じて癒されます。
さて、綾町に入ると、山々の木々が変化します。宮崎県は日南市の飫肥杉など人口植林の杉林が多いのが特徴ですが、綾町の山はほぼ天然の照葉樹林に覆われています。
シイ、カシ、タブ、ヤブツバキなど高低様々な種類の広葉樹が自然のまま残されていて、木々の葉も色や形、厚み、大きさがそれぞれで、特に新緑の季節は文字通り萌える緑が光り輝き、ブロッコリーやカリフラワーがモコモコと盛り上がっているようにさえ見えます。冬の寒さに強いのも特徴で、古くからの原生的な動植物生態を残した自然林は少なく、国内だけではなく世界的にも貴重な存在となっています。
総面積の8割が森林という綾町もこの日本最大級の照葉樹林を大切にし、半世紀以上前から森を守る地域づくりを進め、1982年に国定公園に指定され、2012年にはユネスコエコパークに登録されています。具体的なプロジェクトとして、保護林の新設、人工林から照葉樹林への復元、森林環境教育などを実践しています。
是非渡りたい美しい吊橋「緑の照葉大吊橋」
この大自然林をさらに間近に、より高い位置から楽しんでもらおうと、1984年「緑の照葉大吊橋が完成しました。以来、綾町の観光と森林保護のシンボルとして親しまれ、2004年には土木学会デザイン賞で優秀賞を受賞しています。2011年にデザインも変更され新しい照葉大吊橋として架け替えられました。橋の高さは142m、長さは250mです。
自然原生林の中の人口の橋ですが、見た目の違和感など景観を損ねる事無く、自然の風景の中に溶け込んでいる印象です。橋を渡ると原生林の雄大さと自然を残していく事の大切さを空中散歩をしながら感じられるでしょう。
森林浴が楽しめる森林セラピーロード
照葉大吊橋を渡ると照葉樹林内2kmの自然遊歩道が伸びています。ゆっくり歩いて約40分の森林浴が楽しめます。針葉樹に比べてより濃度の濃い酸素が吸収できる感じで体と心に良い事は間違いありません。
森林セラピーロードにも認定されていて、途中には幹回り4mを超えるタブの木やシイの木の他、高さ22m長さ75mのかじか吊り橋もあり緑と水を楽しめます。野鳥のさえずりや木々の間から差し込む光を浴びながらの森林浴はお薦めです。運が良ければ珍しい昆虫に遭遇するかもしれません。
綾町を流れる綾川の水は町内山奥から湧き出ていて照葉樹林を育んでいます。綾川湧水群と呼ばれ日本の名水百選にも選ばれていて、この川を大吊橋から約4.5km下ると千尋の滝があります。
焼酎好きにはたまらない 雲海酒造 酒泉の杜
宮崎県は鹿児島県と並び芋焼酎大国です。大規模酒造メーカー雲海酒造の工場があるのも綾町です。1989年オープンの通称酒泉の杜と呼ばれる蔵元直営の複合観光施設は、工場見学やアートギャラリー等もあり一大アミューズメントパークのようです。
焼酎の他、かつて日本最南端の酒蔵と言われた日本酒、また南九州で初の本格的ワインも製造していて、焼酎工場とワイン工場が見学できます。見学後は試飲も可能で幾つかの種類の飲み比べも楽しめます。さらに地ビールも製造していてアルコールファンにはたまらないスポットです。毎年春には蔵開き、秋には新酒まつりが開かれ多くの客で賑わいます。
安心安全な農産物が集まる 綾手作りほんものセンター
もう一つ綾を訪れたなら立ち寄りたいのが綾手づくりほんものセンターです。綾町で生産される公に認められた安心、安全な農産物、農産加工品、工芸品を展示販売する直売所です。
宮崎は農業県ですので、綾町でも様々な果物、野菜が作られています。季節によって出荷される種類は変わりますが、宮崎特産の果樹では、マンゴー、日向夏、金柑など、野菜では、甘藷、キャベツ、レタス、ほうれん草、ニンジン、大根、ゴボウなど葉物から根菜類まで、山菜では、シイタケ、わらび、せり、タケノコなどがほんものセンターに並びます。
農産加工品をみると、宮崎ならではの超早場米、日本一の生産量切り干し大根、日向夏のジャムやドレッシング、ようかんやゼリーと地域の特産を生かした商品にも出会えます。
町独自の基準を設け、近代農業がもたらした歪みを反省し、化学肥料や農薬を極力使わない有機農業を推し進めるという自然生態系農業で生産されたものばかりです。1、化学肥料、農薬などの合成化学物質の利用を排除すること、2、本来機能すべき土などの自然生態系を取り戻すこと、3、食の安全と健康保持、遺伝毒性を排除する農法を推進すること、4、遺伝子組み換え作物の栽培をしないこと、以上の4つの基準を満たしたものが認定される仕組みになっています。