最終更新日 2021/06/18
みなさん、お米を食べていますか?私は小さなころからご飯が大好きで、おかずよりもご飯ばかり食べている子供でした。小学校の給食の日も、ご飯が出る日が好きでした。小学校の時は蓋つきのアルミのケースに入った熱々ご飯が出ていたのを覚えています。
大人になったいまでもご飯は毎日欠かせません。特に炊き立てのご飯のあの香りは何度かいでも嬉しいものです。香りだけでなく、ごはんの美味しさも見逃せません。お米をよく噛むと甘く感じますよね。それは、ごはんのせいぶんであるデンプンが唾液に含まれる消化酵素アミラーゼと結びつき、麦芽糖という甘い糖に分解されます。これが甘く感じる理由なのです。
私が1年のうちで楽しみにしているのが9月くらいから始まる新米の時期です。新米のシールがパッケージに貼られたお米の袋をみたら、やっとこの時期が来たと、お米のコーナーに直行します。
日本人には欠かせないお米はいったいいつから作られているのでしょうか。
福岡県は昔から大陸から様々な文化や商品が入ってくる玄関口でした。その福岡にお米が伝わったのは2000年前くらいで、今でも西日本有数のお米の生産県です。縄文時代晩期には既に福岡でお米作りが行われていました。そのことを証明するものとして、板付遺跡からは炭化したお米が発掘されています。
板付遺跡は福岡市博多区板付にあります。まわりにはマンションも建っているので少し不思議な感じがします。ここでは遺跡だけでなく、弥生時代の田んぼやその時代の人の住まいである竪穴住居が復元されています。板付遺跡の敷地内には、「板付遺跡弥生館」があり、古代の人が利用した道具が復元されています。歴史の教科書では見たことがありましたが、実際に弥生土器や火をおこすための道具などを見ることができるので、タイムスリップしたような感じになります。
作付面積を品種別にみてみると、1番目が「夢つくし」、2番目が「ヒノヒカリ」、そして「元気つくし」の順です。
それぞれの名前の由来をご存じでしょうか?作付面積が一番広い「夢つくし」は、九州北部の「筑紫国(つくしのくに)」の「つくし」、そして人に「尽くす」の意味が込められています。
次に「ヒノヒカリ」です。こちらは九州を表す「日(太陽)」と、お米が「光り」輝き美味しくなるようにという思いを込めて名付けられました。
そして、一番若手の「元気つくし」は、「元気に育ち、食べる人も元気にする」美味しいお米という思いが込められています。
名前から見ても大切に育てられたお米ということがうかがえますね。そのお米がお目見えするにはたくさんの時間と努力が必要でした。福岡県は稲作だけでなく、品種改良の歴史も長いのです。1912年に交雑育種法が始められます。1941年にはすでに4品種が育成されました。その後、戦時中は中断、戦後も既存の品種を増産することが目標でした。1980年に入っても主に作っていたのは多収品種※でした。そのため、福岡県産のお米は評価が低いものでした。
※多収品種:玄米やモミがたくさん取れる品種で、味はあまり重視されない。
しかし、ここで転機が訪れます。「あきたこまち」の出現です。地域独自の味の良い品種がデビューしました。そこで福岡県も1988年に再び育種に力を注ぎました。
そのころに福岡県でも糧食味米である「ヒノヒカリ」は想像を超える勢いで、作付面積が拡大しました。そのような中でも新しい品種育成に着手していました。そこで生まれたのが、「夢つくし」です。この新品種を作り出すのに通常なら10~12年かかるところを5年で開発しました。福岡県が以前から交雑育種法の経験があったことに加え、多大な努力があってのことでした。
「夢つくし」は「コシヒカリ」を父に、「キヌヒカリ」を母にもち、コシヒカリの倒伏しやすい欠点を補い、キヌヒカリの栽培のしやすさが特性です。「夢つくし」は学校給食にも取り入れられました。2014年には西の横綱といわれた「ヒノヒカリ」の作付面積を逆転するほどまで拡大しました。
これで安泰と思いきや、自然が相手の稲作です。「夢つくし」が誕生してわずか10年で問題が発生しました。2003年頃から、高温障害によりお米の外観品質が低下したことでした。ここであきらめる福岡県ではありません。高温にも強いイネを改良するために、高温環境がつくれる施設を建設し、味もよく高温にも耐えられる品種の育成に取り掛かりました。
味の良いお米として期待されていた「ちくし64号(つくしろまん)」と、高温に強く、品質のよい「つくし早生」から「元気つくし」が生まれました。「元気つくし」が作り始められて2年目、平均気温が29度を超えました。「ヒノヒカリ」の一等米が15パーセントを切る中、「元気つくし」はなんと90パーセントを確保しました。
「元気つくし」は高温に強く、味もとてもおいしいと評価を得ています。たきたてはもちろん香りだけでも食欲をそそられますが、それだけではなく冷めてもおいしいのです。ですからお弁当に詰めても、おにぎりにしてもっていってもおいしさが保たれたままです。
今何気なく食べているご飯には稲を改良する人、稲を育ててくれる農家さん、それを精米して運んでくれるひと、と多くの人の努力がいっぱいに詰まっています。だからお米の袋はあんなにパンパンで重みがあるのでしょうね。みなさんの想いがつまった福岡県の美味しいご飯を、よく噛んで味わって食べていきましょう。