最終更新日 2021/06/18
三つの酒蔵を訪れる三蔵めぐり
延岡市は宮崎県の北東部にあり、大分県と隣接しています。工業都市として発展する一方で、海と山と川が織りなす大自然に恵まれ、アウトドアも楽しめます。
市内に4本もの一級河川が流れる水郷延岡では、焼酎、日本酒、地ビールといったジャンルの異なる三つの酒蔵が、独自の味を求めて、地域に根付いています。これを地元では、三蔵(みつくら)と呼び親しまれています。
まず向かったのは市街地にある日本酒の「千徳酒造」です。日本酒ができるまでの工程を詳しく説明してもらい、実際に製造している様子を見せてもらいました。大吟醸を造るのに、米をあれ程削るとは驚きでした。発酵後の搾りも手仕事です。美味しいけれど、単価が高くなるのも頷けます。日本酒は神にささげる為に造られたという話を思い出しました。稲作が始まったと同じ2000年以上前から日本酒が造られていたそうです。見学の後には、出来立ての日本酒を試飲。とても美味しくて幸せな気分になります。
次に祝子(ほうり)川沿いにある「佐藤焼酎製造場」を訪ねました。宮崎の地名は神話につながるものが多く、この祝子は山幸彦として知られるホオリノミコトに関係しています。創業100年を超える老舗で、祝子川の深層水を使用した本格焼酎を製造販売しています。ガラス越しに全工程を見ることができます。昔ながらの甕仕込みが行われている工場は、まるでミュージアムのようです。地元産の芋、麦、米,を使った焼酎が作られています。ラベルに地元出身のアーティストの絵を使うなど、しっかり地域に根差した蔵元です。麦焼酎の「銀の水」はすっきりしていてとても飲みやすく美味しいです。
最後は、地ビールの「ひでじビール」に行きました。ビール醸造所は祖母山国定公園、行縢(むかばき)山のふもとにあります。日本のビール文化を花開かせたいとの理念の下、工場内にラボを設置し酵母培養、品質向上に努力しておられます。主原料に九州産大麦を使用、香りづけに九州産ホップを使用した「九州ラガー」を始め、たくさんのクラフトビールが製造されています。なかでも2017年のビールコンテスト「ワールド・ビア・アワード」(WBA)で世界一を受賞した濃厚で美味しい「栗黒」がおすすめです。
歴史ある行縢神社
その後、ひでじビールのすぐ近くにある霊峰行縢山(むかばきやま)に鎮座する行縢神社を訪れました。1300年の歴史を持つ神社です。難しい読みの行縢とは、昔狩猟の際に足を覆った防具のことで、山の形がその行縢に似ているとヤマトタケルが言ったことから行縢山と呼ばれるようになったそうです。雄岳、雌岳からなる山の間に流れる滝は「日本の滝100選」にも選ばれています。鎮守の森に静かにたたずむ行縢神社は、忙しい日常を忘れて、悠久の時を感じることのできる場所です。またご神木の夫婦杉は神様のヤドリギとしてお祀りされています。想定樹齢300年という大きな杉の木です。社殿の前には犬のような猿のようなとても奇妙な顔の狛犬が鎮座していました。
島の浦島で民泊
この日は島の浦島の民泊に泊まりました。島の浦へはカーフェリーの乗り場から、海上タクシーで島へ向かいました。島の浦島は、かつては鰯漁でとても栄えていました。今でも島の人の主な生業は漁業で夕食、朝食ともにおいしい魚料理が食べきれないほど食卓に並びました。翌日は、朝食後に、宿のご主人が車で島のあちらこちらを案内してくれました。あいにくの雨でしたが、お天気がよければ、漁船でのクルージング、山登りなどアウトドアの楽しみがあります。
老舗の破れまんじゅう
延岡駅近くに創業70年の虎屋という老舗和洋菓子店があります。令和になって店の名前を風の菓子虎彦に変えたこの店で一番有名なのは延岡名物「破れまんじゅう」です。延岡は「破れまんじゅう」の発祥の地です。天岩戸伝説でアメノウズメノミコトが手にもって踊った「おがたまの実」に形が似ていることから、「尾賀玉まんじゅう」として売りだされたのが、いつからか「破れまんじゅう」に名を変えたということです。美味しい小豆餡がたっぷり入って、山芋、米粉とお砂糖で作られた薄皮に包まれたこの饅頭は、ほんとうに美味しい。ここでお土産を買った後、延岡城跡に行きました。今は公園になっている城跡からは延岡市内を一望することができます。大きな石垣の残る公園では、春は桜、冬は椿の花が楽しめます。