最終更新日 2021/06/18
元興寺、興福寺を経て春日大社へ
JR奈良駅から、最初に元興寺(がんごうじ)を訪ねます。元興寺は6世紀に造られた日本最古の寺、飛鳥寺が平城遷都に伴って現在地に移されたお寺です。極楽堂や禅室の一部には、飛鳥時代の瓦や柱が残っています。いにしえの奈良が偲ばれるお寺です。
次に興福寺に向かいます。途中、猿沢の池からは興福寺の五重塔を背景に素敵なフォットスポットがあります。興福寺の境内にある国宝館では見る人を魅了する阿修羅像にも出会えます。興福寺も669年に建立された山階寺を起源とする古いお寺です。1300年前と同じスケールに再建された中金堂の朱色が緑に美しく映えます。現代における木造建築としては、日本最大の大きさです。
神聖な気を感じる春日大社
奈良駅と反対方向、春日山の方に歩くとすぐに春日大社の一の鳥居が見えます。二の鳥居をくぐると、いかにも神域に足を踏み入れたと感じる厳かな雰囲気がただよっています。20年に一度の式年造替が2016年に行われました。春日大社にはたくさんの神様が祀られていて、それぞれのお社が並んでいます。また数多くの灯篭があることでも有名です。
2月の節分、8月のお盆には、万灯篭神事が行われ、3千の灯篭に火がともされます。近くの奈良公園には、神の使いとされている鹿たちがたくさんいます。
東大寺の奈良の大仏様
次は、東大寺です。東大寺には有名な奈良の大仏様がいらっしゃいます。5年もの歳月をかけ、全国から多くの人を集めての一大事業。飢饉、疫病の流行、地震などの災害の続く中、聖武天皇の「仏の力で国を守ってほしい」という願いから、発案された大仏建立でした。1,300年以上も昔にこのような大規模な大仏が作られたことを考えると、国の平穏を願う天皇の強い気持ちが感じられると同時に、造営に携わった多くの人々の労苦がしのばれます。
はるかな昔を偲ぶ平城京跡
次の日は、駅の西側からバスで、平城京跡へ向かいます。のどかな風景の中をバスは走り、かつての都跡に復元された平城京跡に着きます。立派な朱雀門の正面には、大極殿がみえます。ここから、平城京跡を一望することができます。大極殿から見て右手には平城京跡資料館。左方向には遺構展示館があり、発掘された状態の遺構がそのまま見られます。
次に東院庭園にむかいます。ここは『続日本書紀』にかかれている「東院」にあたります。発掘・復元された貴重な古代庭園として特別名勝に指定されています。
鑑真和上創建の唐招提寺
次に唐招提寺です。門を一歩入ると空気が変わります。タイムスリップしたような気分です。奈良時代、仏教文化が花開いた奈良にはたくさんのお寺がありました。唐招提寺もその一つですが、他と違うのは朝廷や氏族の力ではなく、鑑真和上によって開かれたお寺だということです。
日本の仏教興隆のために来日を請われた唐の鑑真和上は大変な困難の末、6回目の渡航でようやく来日した折には盲目の身となっていました。その鑑真和上の等身大の座像が安置されています。また、本当に千本の手を持った千手観音も見ることができます。鑑真和上によってもたらされた蓮の花が、1200年もの時を経て毎夏、美しい花を咲かせています。
病に苦しむ人々を救う薬師寺
唐招提寺から、歩いて行ける距離に薬師寺があります。薬師寺の立派な金堂の中には、ご本尊の薬師如来像を中心に、向かって右に日光菩薩、左に月光菩薩が、祀られています。
副住職のお話が心に残っています。病院がなかった時代、人々は薬師如来に病気の平癒を祈っていたのです。薬師如来は左手に薬壺をもっています。日光菩薩は昼、月光菩薩は夜、つまりここは24時間体制の病院だと話されました。今のように医学が発達していなかった時代、人々は祈ることでしか病気を治す方法がなかったのです。
今では、医術や薬によって克服される病気もありますが、まだ治療法がない病気など、人間が本来持っている治癒力に頼るしかない時、祈りの力が必要とされているように思います。誰かのために祈ること、祈ってくれている人を思って頑張ること、人間の心と体の不思議なつながりを感じることが多々あります。
昔の人々の生活に思いを馳せると同時に、今も昔も変わらない人間の営みについて、また祈るということについて考えた世界遺産「古都奈良の文化遺産」をめぐる旅でした。