呑山観音と南蔵院

最終更新日 2021/06/18

紅葉が美しい呑山観音

私が初めて呑山観音を訪れたのは紅葉の季節でした。目を見張るほどに美しい紅葉でとても感動しました。さらに百観音堂の裏手に植わっているドウダンツツジの燃えるような赤い色は、息をのむ美しさです。その時から、しばしばここを訪れることになったのです。

紅葉の美しさばかりではなく、山の上にあるこのお寺の広い敷地を散策する気持ちの良さ、澄んだ空気に身も心も洗われるようです。本堂は厳かな雰囲気です。

段々畑や山里の風景、それにいくつかの茶屋。ことにこの中のひとつ、「猪上茶屋」はここを訪れたら、必ず寄る場所のひとつになりました。ここは3代にわたって茶屋を営んでおり、お参りに来た人々の憩いの場です。お二人の高齢の姉妹でお店を切り盛りしていて、親戚のおばあちゃんの家に来たように寛げます。あったかいお茶にあんこたっぷりのおはぎがお勧めです。

高野山別格本山の「呑山観音寺」が正式名称ですが、地元の人は「のみやまさん」と呼んでいます。広い敷地内には塔頭の「天王院」があります。こちらも静かな境内の中に、本堂、愛染堂、七福神堂、極楽住生院とたくさんの建物があり、それぞれのご本尊が祀られています。

四季折々の花を愛でながらの散歩コースとしても適しています。信仰の場であると同時に訪れる人を優しく受け入れてくれる大らかさが感じられるお寺さんです。

世界一の釈迦涅槃像のある南蔵院

「呑山観音寺」から、車で20分ほどのところに「南蔵院」があります。「南蔵院」は博多駅から、福北ゆたか線で25分の「城戸南蔵院」駅から徒歩5分という交通アクセスの良いところにあり、訪れる人の多いお寺さんです。

小高い山の中腹にあり、広い敷地内には川が流れ、滝があり、鯉の泳ぐ池、亀のいる池などもあります。

見上げるほど大きな不動明王像や優しいお顔のわらべ地蔵を眺めながら、七福神トンネルをぬけて行くと、驚く光景に出会います。大きなお釈迦様の寝姿を目にした人は、だれでも驚きの声をあげるほどです。ブロンズ製では、世界一の大きさだそうです。全長41m、高さ11m、重さ約300t、数字を見て想像できますか?

南蔵院では、長年にわたり、ミャンマー、ネパールなどの子供たちに医薬品などを送っていました。その返礼としてミャンマー国仏教会議から、釈迦と高弟子二人の仏舎利を授与され、これらの仏舎利を安置するために建てられたのが、この釈迦涅槃像です。この涅槃像の体内参拝もできます。涅槃像の近くにはおみやげ物店の並ぶ仲見世通りがあります。

ささぐり四国霊場88か所巡り

南蔵院は「ささぐり四国霊場88か所巡り」の一番札所です。四国にある空海ゆかりの寺88か所を回ることを「四国霊場88か所巡り」といいます。88のお寺を回ることによって、人間の持つ88の煩悩が消えて、願いがかなうと言われています。

ここ篠栗にも空海ゆかりのお寺がたくさんあることから、ここでも88か所巡りが行われていて「ささぐり四国霊場88か所巡り」と呼ばれています。また呑山観音寺は16番札所、塔頭の天王院は36番札所となっています。

神仏混淆のなごり

「呑山観音」も「南蔵院」も境内に神社があります。神社は神道の神様を祀るところ、そしてお寺は仏教の仏様を祀るところなのに何故と不思議に思われる若い方がいらっしゃるかもしれません。

仏教が645年に日本に入ってから、最初の頃はお互いにいがみ合っていましたが、奈良時代からは、日本の神と仏教の仏菩薩は本来同じものと考えられるようになって、その後、両者が一緒に拝まれるという神仏混淆の状態が続いていました。

地方の旧家に行ったら、今でも神棚と仏壇が祀ってある家が珍しくありません。明治新政府の設立後、神仏分離令、廃仏毀釈がなされ、多くの仏教寺院が壊されたり、共存していた神社とお寺が切り離されたりしました。でも、今も時折、お寺の境内に神社を見かけることがあります。

また、最近宗教界の大きな動きとして、神社と寺院の緩やかなつながりが試みられています。2020年3月11日には仏教,神道、キリスト教の三者による東日本大震災の合同慰霊祭が鎌倉で行われました。

呑山観音寺には、天神、淡島明神鎮守二社と鉾立稲荷明神社があります。南蔵院には南天稲荷社があります。二つのお寺を訪ねて神様、仏様とのつながりを考えてみるのもいいかもしれません。

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